25 操り人

… 2004年6月2日 17:30


「えー!ちょっとこれって剛君が最後の一人よね!ああん山下君!!」

「どうやら そのようらしいな」

吉原の不満げな声に中田議員がたしなめるように言った。

「なんか納得いかなーい。もう!それに結局死んじゃったじゃん!剛君」

吉原が怒りながら議員にからみつく。

「せんせはどうだったの!?剛君オッズ高かったじゃない。一人勝ち?ゆるせなーい」

「いや、私も剛君は買ってなかったから・・・」

「なぁんだ」

何故かほっとしたような吉原は、画面に食い入ってる高橋を睨みつける。

「意外な結果だったけど、あんたも外れたの?」

しかし高橋はちらと吉原を見ただけで、すぐまたモニタへと顔を向けた。

「なーによ ヤな感じ!」

吉原が唇をとがらせていると、ドアが開き、杉田が現れた。

「みなさんいかがでしたか?24時間たっぷり堪能できましたか?」

高橋がすぐさま杉田に向き直ると

「これ録画したのCD-ROMにしてくれるんでしょ?」

と言ったのに、意味ありげに笑みをたたえた顔を見せた。
もちろん、多少の手数料はいただきますがね・・・

「どうぞご確認ください」

杉田は例のアタッシュケースの中から、あの用紙をひとりひとりに返し始めた。
中田はそれを受け取るなり、苦虫をつぶしたような顔になりくしゃくしゃに丸めると、床に投げつけた。
杉田はそれを横目でちらりと見、薄く笑った。

「ご覧いただけましたように、勝者は堂本剛君でしたから、高橋様にはお約束どおり、現金で手渡し致します。
オッズは手元の表にありますように掛け金の35.2倍です。
おめでとうございます」

「ありがとう」

ニヤリと高橋が笑った。

それが合図のように杉田がリモコンのボタンを押した。
すると壁に組み込まれていた小さなドアが電動で開いた。
そこには大型の金庫があった。
驚いた吉原が目玉を丸くして口を開きかけたが、言葉にならずあわわと喉を震わせている。


「24時間大変お疲れ様でした。ではこれから清算にはいらせていただきます。みなさんよろしくお願いいたします」


追い討ちをかけるように、杉田の無機質な声だけが響き渡った。

 

バリバリバリ



ヘリコプターがすさまじい轟音と、風を巻き起こしながら島の真上へと飛んできたのを、画面で確認した杉田が言った。

「お迎えがきたようです。
これでゲーム終了ですので速やかにみなさんも退散ということで、よろしいですね?」

 


「杉田?24時間経ったからみんなを迎えに来たがこれはどうゆうことだ!?」

部屋に入るや否や、モニタに映る23人の死体を眺めたその男――もう老人といってもいいくらいのかなりの高齢と思われる人物――は、あっけにとられてしばらくつぐんでいた口をようやく開いた。

「社長・・・お約束どおり24時間好きにさせてもらいました」

「好きにしていいっていったが、殺すなっていっただろ!」

「殺してませんよ。私は」

殺し合いさせただけですから・・・

「ユーちょっとやりすぎなんだよ。またマスコミに口封じさせなきゃ・・・。
はぁ〜。入れちゃってるスケとかどうしてくれんのさー。ミーも引退かな〜」

剛の死体を画面越しに眺めながら、その老人は大きなため息をひとつついた。

「後始末はちゃんとしますから大丈夫ですよ」

杉田がニヤリと笑った。


一人10億×23=230億

ずいぶん高かった買い物でしたからね。

「ジャニーズのメンバー23人一人10億で24時間レンタルします」

なんか彼、他にもスマップ以外のジャニーズメンバーのデマをネット上に流して、遊んでたらしいじゃないですか。
これも軽いノリで出したんでしょうね。

しかし私はきちんとお金を払いその権利を買った。
彼らを自由にできる権利をね。24時間という制限つきで。
あなたがこの出品者が中居君であることを突き止めた。
そして興味が沸いたので中居君を追加して、彼の分もお支払いした。

私も最初これを見たとき冗談かと思いましたけど、あなたに直接連絡してよかった。
まあ、一応この世界でお互い知らないわけではなかったですからね。
あなたも、230億という金に目が眩んだのでしょう。
大事な子達をこんな危ない私に売るなんて・・・


中居君には「最近いい気になってる後輩たちを一日修行してみませんか?」と声をかけると喜んで参加してくれましたしね。
それが、蓋をあけてみれば自分も命差し出すことになるなんてね。
まあ、本人はオークションに出品したことすら忘れていたみたいですが。
彼は何かと滑稽ですね。ちょっと気の毒になるほど・・・。

彼には生きていて欲しかったなぁ。そのために有利な司会役を回してあげたのに。
司会役は彼の十八番だったことですしね・・・。

くっくっくっ
とまた笑った杉田に

「おまえにはかなわないな」

大事な子達を奪われたその老人は、呆れたように苦笑した。


23人の代わり早速探さないとな。まあ子供たちも増えすぎてたし上がつっかえてると
デビューも厳しいしちょうどよかったのかもな。
あー、次のデビュー組のグループ名、何がいいと思う?
これが毎回悩みの種なんだよー
やっぱり引退はまだ先かなあ・・・


老人は商魂を呼びさまされたのか、急に瞳をぎらつかせ真顔になった。
特殊な世界にトップで君臨し続けているにふさわしい、まさしく王者の顔だった。


 

 

 


白い積乱雲が青空に現れると、虹がその上に橋をかけた。
夏が始まったのだ。
これからも幾度となくこの島に巡ってくるだろうそれが。

オレたち23人がここで戦い殺しあったことは
世間の誰にも知られることのないまま
何度でも夏は繰り返し、通り過ぎていくだろう。

幾つかの後悔と憎しみと恐れ
あきらめと、かなしみと痛み
そして友情のかけらを
冷たい胸に残したまま。
オレたちの夏の始まりは幕を閉じ、もう二度と巡ってこないのに。

暑い夏は今始まったばかりだ。

 


















The END