3 罰ゲーム … 2004年6月1日 16:50 「今から首輪の機能をみなさんに見てもらいまーす」 中居は手にしていたリモコンに視線を落とした。 首輪!? そうだ。この首輪は一体・・・ 各自が首についているそれを改めて確認したそのとき。 「スイッチオン!」 中居がリモコンのボタンを押すと同時にどこからか、ピッピッピッ・・という電子音が聞こえてきた。 「大野君!?」 相葉が大野の首を指差した。 その首輪の中央部分が赤く点滅をしている。 「うわ!」 大野が首輪に手をかけ叫んだ。 「な・・・!なんだよこの音!」 大野は不気味な音を発している自分の首輪に手をかけたが、それはむなしくカチャカチャという乾いた金属音をだすだけだった。 「ごめんねー大野君。悪いけどここで死んでね。 あ、それ爆発すると頭と胴体が引きちぎれて色々ぐちゃぐちゃに飛び散るからさ。 血しぶきどころか脳ミソしぶき浴びることになるかもしんないから、みんな離れたほういいよ〜」 中居は信じられないような恐ろしいことを平然と口にした。 嘘だろ!? 嵐のメンバーだけではなく誰もが唖然として大野の首輪を凝視した。 「嘘でしょ・・・?中居君」 大野が懸命に訴えたが中居は冷たく微笑しているだけで何も答えない。 その様子に一人が席から離れ隅に移ると、それに続くように椅子や机を蹴散らし、ほとんどの者が大野との距離を少しずつ伸ばしていった。 「リーダー!」 そんな中で大野に近づこうとしたのは相葉だった。 「よせ!」 相葉のからだを櫻井が後ろから羽交い絞めにし、踏みとどめようとする。 しかし、大野を見たままで静かに首を振る相葉。 「何言ってんだよ!大野君助けないと!」 相葉が櫻井の手を振り払い大野の下へ駆け寄った。 「相葉ちゃん・・・」 涙目になっている大野が、目の前に駆け寄ってきて心配そうに自分を見ている相葉に呟いた。 「爆発なんて冗談じゃないよ!」 相葉は音と光を発している大野の首輪に両手を伸ばした。 首輪を揺らしたり、つなぎ目を探したりとガチャガチャ音を鳴らしながら、必死の形相でそれを外そうと試みている。 そんなことで首輪が外れるとは思えなかったが、黙ってみていることの方が相葉には耐えがたかったから・・・ 「あらーちょっとやばいって相葉くん。アブねーから離れろって」 リモコンを作動した当の本人の中居が、教卓から面白そうにその様子を眺めている。 「もー何みんなマジになってんの!? やだなー!あははは・・どうせこれ、どっきりとかなんでしょー?ねえ中居君〜」 こんなの本当にやるわけないじゃん!と秋山が笑うと 「だから本当だって言ってんべ!しつこいなあ」 少し引きつった顔で中居が叫んだ。 「!! ・・・なんだよ。こんなタチの悪い冗談いい加減にしろよ!」 中居の顔を見た秋山は憮然とした表情で声を荒立てたが、言葉とは裏腹に冷や汗が止まらなくなっていた。 なんなんだよ・・・冗談・・・だよな?これ・・・ そう思いながらも、秋山の足はじりじりと後方の壁際へと下がり始めていた。 ピピピピピピ・・・・ 「・・・や、やめ・・・」 大野の声は涙声に変わっていたが、それと共に規則正しい間隔で鳴る電子音と点滅の速度が速くなってきていた。 古ぼけた教室が静まり返り、電子音がさらに速度を早め冷たく鳴り響く。 「相葉ちゃん・・・」 大野が相葉の目をじっと見つめてから、ふっと視線を逸らした次の瞬間 「なっ!」 相葉が声を発すると同時に後ろに吹っ飛んだ。 大野が相葉の腹部に蹴りを入れたのだ。 そして大野はさらに相葉から離れるように自ら後ろに下がった。 「ありがと相葉ちゃん。オレ・・・オレ嵐で・・・」 大野の目から涙が一筋頬を伝わり、スローモーションのようにその唇がゆっくりと動くのを相葉は見た。 そして―― ピピピピピピピピ・・・ ピ―――――――――――――ッ 無常にも電子音が大野の最期を告げる合図を発したのと同時にすさまじい爆発音がして、その首が血しぶきと共に飛び散った。 「あ、あ、あ、ああああーーーー!!」 言葉にならない声をあげ相葉はまばたきもせずその惨状をつぶさに目撃していた。 たった今。目の前で。 大野の首が吹き飛ぶのを。 「おおのく・・・うそだろ・・うそだあああ!!!」 思わず目を覆う者。 食い入るように見ている者。 飛び交う悲鳴。 まるで地獄絵図のようなその様。 頭部のない大野の体は、支えのなくなったマネキン人形のように床に倒れた。 その首があった場所からは血が流れ出し、血だまりの海の中に大野が沈みこんでいくように見えた。 相葉は絶叫し、教室中に充満している煙と血の臭いにげほげほと咳き込みながらも床を這いずるように進み、大野のからだに近づくと恐る恐る触れてみる。 「いやだ・・・いやだよー!大野君!大野君!」 その場にいた誰もが成すすべもなく、青ざめた顔でただ立ち尽くしているばかりだった。 国分は血の気のない顔のまま唇をかみ締めて首輪にそっと触れた。 ――2じゃなかった。 ジョーカーだったんだ。アンラッキーじゃなかった。 オレはアンラッキーなんかじゃなかった! 【大野智 死亡 残り22名】 降り注いだ血と肉塊で、教室はまるでスプラッタホラー映画に出てくるような惨劇の館そのものだった。 そんな中で大野の血によって自分の身が汚れるのも顧みず、相葉はその死体にしがみついたままだった。 大野の壮絶な死を目の当たりにしたショックと、首のない体にすがりついている相葉の痛々しい様子に、今では声ひとつ上げる者もおらず、教室内は水を打ったような不気味な静けさに包まれていた。 「はいはいはい!だから言ったべ、どっきりじゃないって。 ここまでやんねーとわかんねーんだもん。っとに世話焼かせるよな。 では頭の悪いおまいらにこのゲームのルール説明します。 1度しか言わないからよく聞いてね!」 中居は恐怖で硬直しているみんなを尻目に、相変わらずの軽い口調でまくしたてた。 「ここは今現在は無人島です。 企業が買い取ってリゾート地に開発する途中で中断されたままらしーですが、今回のゲームにちょうどいいロケーションなんで思う存分殺しあってください。 ルールは無制限。タイムリミットは明日の17時までの24時間。 これから荷物を渡します。 地図、食料、飲料水、懐中電灯と武器などが入ってます。 あ、武器は当たりと外れがあります。それ持ってここを出たらゲーム開始です。」 言い終わると唇の左端をもちあげ、反応を伺うかのように教室の顔たちを見渡した。 たった今首輪の威力を見せ付けられ、もはや冗談でも撮影でもないことを否応なしに突き付けられたみんなは、この理由すらわからない殺し合いのゲームの説明に口を挟むことすらできなかった。 ただ分かっているのは、自分たちがとんでもない状況に追い込まれているということだけで、恐怖で打ち震えることしかできずにいた。 さらに追い討ちをかけるように、中居が淡々とした口調で殺し合いを命ずる声が響き渡る。 「首輪には今見てもらったように爆発機能と超小型カメラと監視システムがついてて、みんなの様子がこっちには分かっちゃうというハイテクが詰まってます。 島の外に出ようと海に逃げてもドカンといっちゃいますんでお忘れなく。 ゲーム開始後は6時間ごとに流す放送で死亡者と禁止エリアを発表します。 禁止エリアにいたままだと爆発しちゃうんで移動してください。 ちなみにこの校舎はゲームが始まったら禁止エリアになるから戻ってこないでね。 それから23時間が経過すると、禁止エリアが15分ごとに増えていきます。 最後の15分になると一箇所を除いた全ての地域が禁止エリアになります。自爆に注意ってことでーす。 島の4箇所に電光掲示板設置してまして、死亡した人間の名前と、禁止エリアはその都度掲示板に表示されますんでチェックできます。」 早口の中居の声に、誰もが真剣な顔で、一言一言を聞き漏らすまいと耳をそばだている。 禁止エリアにいると爆発するからすぐに出ろと。 6時間ごとにエリアは変っていく・・・でそれが、残り1時間になると15分ごとに増えるって? なんだよ。どんどん追い詰められていくってことじゃんかよ! 頭の中に冷や汗が流れてくるようだった。 坂本が焦りながらも今の注意を忘れまいと、何度も心の中で反芻していると中居がまたふざけた調子で話し出した。 「はーいみなさん。ここまでメモりましたか?では次に行きます」 え?メモって?メモ帳ないし・・・先に配れよ! 坂本は中居の言葉を真に受けて、書くものねーよ!と焦って周りを見渡したが、誰もメモらしきものを取っている様子はなく少しほっとした。 「勝利者が確定した時点でその戦士の首輪は爆発機能が停止し自動的に外れ、ゲーム終了ということになります。 勝利者が決まらずタイムアップになった場合は島中が禁止エリアとなるため、全員爆死になります。 時間内に最後の一人になるまで殺しあうこと。それがおまえらの仕事です。 わかったかー?おまえらがんばれよー」 逃げることすら許されず、24時間以内にこのメンバーで最後の一人になるまで殺しあう。 それができない場合は全員死亡。 つまり、生き残るためには・・・ 「自分が最後の一人になるしかないってことか・・・どーすんだよまじで。」 坂本は小声で隣の井ノ原に話しかけてみたが、いやそうに手でしっしっと野良犬でも追い払うような仕草をされてしまい、 なんだよ・・・ ちょっとむっとして唇をとがらせた。 ゲームの全容を知り緊迫と恐怖と不安が混じったそれぞれの思いが、教室内に満ちていた。 異様な空気の中、「あの・・・」と声を上げた者がいた。 「・・・なんで一人だけなんですか?一人だけしか生き残れないってどうして・・・?」 こわごわといった感じで質問を投げかけたのは今井翼だった。 「そうだよ。それに、大体なんでこんな殺し合いしないといけないんですか。 オレら・・それに社長はこのこと知ってるんですか?」 滝沢も一番肝心なことについて知りたくて、震える声で疑問をぶつける。 そうだ。何故このメンバーが集められて殺し合いをしなければいけないのか。 生き残れる者は一人きりなのか。 また社長がこんなことを許すはずもなく、知っているとすら思えなかったが、それについての説明はなかった。 「もちろん、言い忘れてたけど、これは社長の命令でもあります」 中居が冷ややかな目で言った。 社長の命令・・・! 心臓をえぐるような言葉に教室中がざわついた。 「うそだ!そんな社長が!こんなことを!!」 バン! そのざわめきを沈めるように、中居が両手を教壇に叩きつけた。 再び静寂が訪れる。 しばしの沈黙。 そして 「おまえらさ、買われたんだよ」 中居の言葉が教室内にポツリと落ちた。 最後の火種のように。 買われた? 一体どうゆうことなんだ? それが今の質問に対する答えなのか? 何故?どんな理由で?誰に?社長はそれにどう関与しているのか? そしてそれが、どうしてこの殺し合いをすることになった理由になるのか・・・ みんなは「買われた」という言葉の意味を考えあぐねていた。 「買われた・・・って?一体どうゆうことなんですか!?それに社長は本当にこんなことを中居君に命令したんですか?」 滝沢の声はかすれていた。 中居は、余計なことを口走ってしまったというように首をすくめる。 みんなは中居の言葉の続きをじっと待っていた。 しかし、中居は 「ごめんね」 そう言って目を背けた。 もう疑問に答えるつもりはないらしい中居の様子にさらに詰め寄る者はいなかった。 ごめんね。 その中居の言葉に深い意味はなかったかもしれない。 だけど・・・ ごめんね。 剛は少しの間それについて考えてみた。 なぜこの場に及んで中居が謝りの言葉を口にしたのかを―― ジリリリリ 突如ベルのような音が鳴り響いた。 それと共に戦闘服の男が中居に何か合図をし、教室のドアが開かれた。 剛の思考はそこで止まった。 たくさんのバッグが積まれている大型のワゴンのようなものが教室に入れられた。 「やっべえ。もう時間ないって。呼ばれた順からバッグ受け取ってさっさと外に出てねー」 言い終わると中居は唇を突き出し息を吐きながら、前髪を吹き上げた。 誰もが知る彼のいつもの癖だった。 一方、島のとある場所に作られた地下室では4人の男がこのゲームの一部始終を見ていた。 「いかがですか?すべてみなさんのご要望どおりに致しました。」 教室に取り付けられているカメラが映し出す映像を、モニタに表示させて一人の男が言うと、食い入るようにその画面を見つめていた3人の男たちが、満足そうに頷いた。 モニタを表示させたのは、島でのこのゲームを取り仕切っている杉田という男だ。 背が高く大柄である彼は、薄い口元に無精ひげともいえるようなわずかなひげをたくわえていた。黒に近いグレイのスーツをノーネクタイで着こなしている。 青年実業家とか職種がいまいちわからないカタカナの肩書きをいくつも持っているような印象を与えるのは、その上背と、知性と野生を兼ね備えているような服の下のほどよい筋肉質の体形のせいだろうか。 フレームのない眼鏡の奥に見えるまなざしは、柔和な印象を与えるものであったが、それは瞳の奥に冷徹な光を閉じ込めるのに成功した彼の努力の結果だった。 今回のゲームのために作られたこの部屋の壁一面は、おびただしい数のモニタで埋め尽くされていた。 モニタは、島の要所要所に取り付けられたカメラと、ゲーム参加者の首輪のカメラが、それぞれの様子を映し出すために設置されたのだった。 「大野君・・・かわいそう・・・」 涙を浮かべながらも首のない死体が映っている画面から目を離さず、体格はいいが少し腹のせり出した50代と見受けられる男が言った。 「ねえ ちょっと今の首が飛ぶ場面もっかい見せてくれない」 黒尽くめの服装に、帽子を目深にかぶった年齢不詳な男のリクエストに杉田は、ええどうぞとリモコンを渡す。 「これで何回でもご自由に」 「ありがとう」 男は薄ら笑いを浮かべながら、スローモーションで首が吹き飛ぶ画面を見ている。 「ちょっと悪趣味じゃない?スローモーションなんて! これだから快楽殺人者とはトモダチになりたくないのよ!」 背は高いがなよなよした風情の長髪の、20代と思われる男が細い眉をしかめた。 「オレとあんたが友達に?ご冗談を」 ふっと笑い飛ばし、前髪をかきあげる。 その仕草はとてつもなくイヤミに見え、尚且つ、はまりすぎていた。 「まっ!」 「それに快楽殺人者とは聞き捨てならないな。オレは殺人は犯さない。 観賞が趣味なもんで。 そうゆうあんただって同じようなもんじゃないのか?」 ひょうひょうと答えると、男はまたリモコンを操作しながら大野の死体に釘付けになった。 -----美少年、美青年を買うだけでは飽き足らないだろう、この変態ども!----- とあるきっかけでジャニーズのメンバー同士で殺し合いをさせるというこのゲームをその変態どもに破格の金額で売りつけておきながら、杉田は心の中でせせら笑っていた。 自分の手のひらで踊るその生き物たちを見下しながら。 「ほんと高いお金ハラッたんだから元とらないとね。せんせ?」 なよなよ男が言い画面の前のスツールに腰掛けると、先生と呼ばれた50代の男は中央のソファに座り頷いた。 「賭けの結果も楽しみだ。24時間これからたっぷり楽しませてもらうよ」 |
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