14 休息 … 2004年6月2日 05:00 「おはよーございまーす!は〜い朝から今日も仕事熱心な中居でーす。 今は6月2日朝の5:00でーす!24時間テレビ愛は地球を救うに出演のジャニーズのみなさーん!?調子はどうですか?眠ってた人も起きて仕事してくださいね〜!!そんでは、死亡者発表しまーす! 相葉雅紀君、松本潤君、櫻井翔君、ニ宮和也君、滝沢秀明君、秋山純君、以上6名〜! 残りは13名です。はいおまえらそろそろ本気だしてがんばれよー!禁止エリア増やしておくからメモるの忘れんなー。じゃあ増えたエリア発表しまーす。地図のC地区、D地区、J地区、あとQ地区でーす。」 あははは。中居君相変わらずとばしてんなー。 んで、どこが愛は地球を救うだって?俺たち殺しあってるんですけどぉ〜。 山下は中居の放送に皮肉めいた笑いを浮かべながら、スクラップ置き場にあった小さな台所に立っていた。 のん気にもバックに入っていた歯磨きセットで歯を磨いていたのだ。 昨夜は満天の星が輝く空の下、比較的状態の良いまだ綺麗な赤を保っているダットサンを見つけ、その中で睡眠をとった。 中は革張りのシートで寝心地も悪くなく、眠りを妨げる邪魔も入らなかったため熟睡することができた。 おかげで、朝5時というとんでもない時間の放送に起こされたにもかかわらず、目覚めはすっきりしていた。 いやあーまさか相葉君だけじゃなくて、嵐全滅するなんてなー ていうか滝沢君も死んじゃったのかー。やるなぁ相打ちだったのかなあ? 秋山君ももう少しがんばってくれればよかったのに。 俺と同じでMAから一人抜擢だったのに残念じゃん。 それにしてもオレが大人しくしてる間にこんなに大勢死ぬなんてなー。 まあそれもオレの演技がよかったからだよね、やっぱ! 山下は滝沢についた嘘が思った以上の成果をあげたのに、昨夜へこんでいた機嫌もすっかりよくなっていた。 あーそれにしても嵐の全滅シーン見たかったなーちくしょー。 やっぱ後ついてけばよかったかなー? まあー体力温存でいいけどさー 意外に簡単なんだもん・・みんなもっとちゃんとしようよー。 これじゃつまんないって! 弱すぎ〜〜オレの出番ないじゃん!? 山下がふふんと、鼻歌まじりで歯を磨き口をゆすぐと、ポケットの携帯が震えだした。 はいはいはい。 「もしもーし?」 お!?ついにお役目がきたかなとわくわくしながら山下は電話に応答する。 「嵐ガ 全滅シタカラト言ッテ 調子ニ乗ルンジャ ナイゾ。 ワカッテルナ。指示ヲ 出スマデ 余計ナコトハ スルナヨ。」 声の主は釘を刺すように昨日と同じことを言った。 でも・・といいかけた山下は思い直して 「はい・・わかりましたー」 と、とりあえず返事をし、調子狂うなこの機械な声!と思いつつ相手の一方的な話しに適当に相槌を打った。 話し終わり、通話ボタンを切った山下は不愉快そうに電話を睨み付けた。 余計なことするな? ちぇ! とにかくもう少し人数が減るまで何もしないで待ってろって・・んだよぉ! これじゃゲームにならないじゃん・・ 「ちゃんとオレの出番つくってくださいよー」 山下はつながってない携帯電話に向かってひとりごちた。 あかん・・・ 「眠ってしもうた」 城島が放送で起きると、山口はすでに起きていて窓の外を眺めていた。 「ごめんな。オレが見張りするっていうてたのに・・・なんやかっこ悪いな」 頭をかいて山口の横に立つ。 「いいっすよ。リーダーよりオレの方がまだ若いから。お年寄りは大切にしないと・・」 そこで言葉が途切れたのは 「おまえなー」と城島が軽く山口をこづいたためだ。 なんとなく笑いあってみたものの山口は、はあと大きなため息をついた。 死んだ仲間の名前が、たった今放送されたというのに、俺たちなにやってんだ? いつまでここにいるつもりなんだ・・ここにいて何か解決できるのか? 外ではこうしている間にまた誰かが殺されているかもしれないのに。 しっかり眠れただけあって、頭は冴えていた。 「リーダーはこれからどうするつもりなの」 またその質問を投げかけていた。 「オレは・・太一探さなと思っとる」 城島がきっぱり言った言葉に山口はさらに突っ込んだ。 「そして、探してどうするの?」 今度は答えが返ってこない。 「太一に聞くの?殺したのかって?坂本君殺したのかって?」 「・・・・・」 やはり返事はない。 「もしそれで殺したって返事したらどうするの!?茂君どうするんだよ?」 知らないうちに声がたかぶっていた。 「わからん・・・」 今度は、山口とは対照的な自信なさ気な声で返事が返ってきた。 「わからんよ。それでどうするって・・・わからんけど・・・でも・・」 「ごめん・・・」 山口はうなだれた。 わかるわけがないのだ。こんなゲームに躍らされている自分たちに、何の道があるというのだろう。 突然ピピピッとう音がどこからか聞こえてきた。 え? と目を合わせた二人は、はっと気づくと慌ててバッグのところに駆け寄る。 バッグの横に置かれている探知機が反応している。 警告音が鳴っていたのだ。見ると二つの赤い点が左右から自分たちのいる場所に近づいてきていた。 「誰かが、来る」 山口はバットを握り締めた。 点滅が近くなる。 もうすぐそこまで着ているのだろう。 トキオのメンバーとは限らない。 一体誰が・・・ 本堂の入り口へ足を運んだ山口は外の様子を伺った。 来た! あれは?あの見覚えのある人影は・・・ 城島も隣にきて同じ方向を凝視した。 「太一?」 太一やないか?城島がささやいた。 そしてそう思うともう声をかけていた。 何も考えることもなくその呼びなれた名前 「太一!」と。 呼ばれた国分はさっと森の茂みに隠れ込んだ。 誰だ!? 辺りを慎重に見回す。 前方にある鳥居の奥から聞こえたような気がした。 そしてもう一度、「太一!」という声が聞こえた。 あ・・・ 今の声は・・きっと・・・ ぐっとマシンガンを握り締める手に力がはいった。 茂くん・・・――― 城島と山口はじっと鳥居の奥を見ていた。 暫くして鳥居から顔をひょっこり出した国分が、二人の姿を認めると駆け込んできた。 「茂くん!達兄ぃ!」 国分はうれしそうに本堂に上がりこんだ。 「よかったー無事で」 山口はそんな国分を頭の先からつま先までまじまじと見た。 視線に気づいたのか 「やだなー。オレ足あるでしょ?幽霊じゃないから。ま、幽霊なっても会いにくるかもしんないけどさー」 と屈託のない顔をする国分。 「太一も怪我なくてよかったわ」 城島もほっとした表情で国分の背中をばしばし叩いた。 「つぅ!たたきすぎだって!」 国分が大げさに顔をしかめて見せたのに、山口は抑揚のない声で呟いた。 「坂本君死んだときってさ、太一側にいたの?」 え? 笑って振り向いた国分の顔が、問われている意味を知ったのか固い表情に変わっていった。 「太一の武器って何?」 尚も山口は問い詰めるように厳しい顔をして国分を見つめた。 「おい、やめ・・」 そう言う城島の制止を振り切り、言葉を続ける。 「質問に答えてくれるよな?大事なことなんだこれは。松岡も死んじゃったし、誰にやられたか知らないけど・・・トキオはもう4人しかいないんだから、ちゃんと確認しとかないと」 山口の尋問のような言い方に、国分は自分が不信感を抱かれていることに気づかされた。 「やだなー何言ってんの。ひでーよ。リーダーなんとか言ってよ」 たまらず山口から視線を外し、国分は城島を見た。 すると 「そやな。とりあえず武器だけ見してよ。おれらのはこれやから」 と、国分の警戒を解くような笑顔を見せてバットと探知機を差し出した。 へ、へえ・・・と、国分は探知機に視線を走らせたもののすぐにそれを床に置き、二人の顔を見比べた。 「オレ疑われてるんだ?ねえ?仲間の二人にオレ疑われてるんだ?」 「太一 それはちゃう・・」 城島が否定したが、国分はその顔をきっと睨み付けた。 「なんだよ。二人して、どうするつもりだよ。身体検査でも始めるつもり?信じられねーよ!」 「そうじゃなくて、わかるだろ?バッグをよこせ」 山口が国分のバッグを取り上げようとした。 「別に・・・見たいなら見れば」 と強張った顔で国分は自分のバッグを押しやった。 城島がバッグを手に取り中を確認した。 山口も思わず覗き込む。 ? ない? マシンガンがない! 驚いて山口は国分を見ると 「これ」 と、可笑しそうにポケットから取り出したのはカッターナイフだった。 「カッター・・・」 城島が呟いた。 「そやったか。カッターか・・・」 「やだなー?なに?二人とも変な顔してオレが何か別の武器でも持ってるとでも思ってたの」 「ま。まさか」 ははっと山口は笑った。 なんだ、太一じゃなかったんだ。 マシンガン撃って坂本君殺したのは、太一じゃなかった! そうほっとすると同時に、今まで仲間に対して猜疑心を持っていた自分が恥ずかしくなった。 だめじゃん。オレ。仲間信用してないなんて・・ 仲間疑って、間違いでも犯したら取り返しつかなかったよ・・・ 緊張が解けて山口は思わず笑顔になっていた。 やっぱ、山口君疑ってたんだな。茂君も・・・。 よかった。秋山からカッター奪ってきてて。 山口と目が合った国分は笑顔を返しながらそう思っていた。 ピピピッ・・・ またあの音が鳴り響いた。 3人は一斉に床に置いてある探知機を見た。 もう1つの点もこちらに向かってきていたのだ。 「また誰かが来る・・誰か・・・」 山口の声は危険を予知した恐怖の色にふちどられていた。 じゃり・・・と石を踏みしめる音がしてそれはやってきた。 「山・・下?」 山口の声に、外に背を向けて立っていた国分も振り返った。 突如現れた侵入者とトキオの3人は、本堂とそこにつながる短い階段を挟んで見詰め合った。 長めの前髪の下から、大きな目をきらきらと覗かせているのは山下だった。 「わ!びっくりしたー!先輩たちじゃないですか」 「山下・・・」 「おはよーございまーす。トキオのみなさんはここに集まってたんですね。 いやー、いいなぁ。こんなところでみんなで寝泊りなんて。なんか修学旅行みたいですね」 「お、おう」 「・・・?どうしたんですか?変な顔して」 3人が3人とも顔を見合わせ、この珍客をどう扱っていいか戸惑っている様を見て 山下は苦笑した。 「なんかお取り込み中でしたか?」 「・・・いや。なんでもあらへん。山下おまえ一人か・・大丈夫やったか?」 城島の繕ったような台詞に 「はい。一人です。オレ先輩たちみたいに仲間もいないし・・」 山下は、ふっと顔を斜め下にむけ、目を潤ませてみた。 そうしながらも国分がカッターをおもむろにポケットにしまったのを見逃さなかった。 さらに素早く視線を本堂へ走らせると、金属バッドが目に入った。 カッターとバッドか・・・。あといっこ武器なんだろ。 ちょっと気をつけた方がいいな。相手も三人いるし。 こんなとこに集まって何しようって魂胆かしらないけど、敵情視察も兼ねて探りいれさせてもらいまーす。 「・・・オレまだ誰とも会ってなくて・・・ずぅっと歩いててすっごい疲れちゃって、ここにお邪魔してもいいですか?」 そう言うと、誰もいいと承諾していないのに勝手に本堂へ上がりこんだ。 3人はそんな山下にどう対応していいか判断がつかず、明らかに困惑しているようで互いに視線を送りあっている。 しかし、その微妙な空気も意に介せず、山下は邪気のない顔で床に置かれていた探知機を発見すると 「うわ!すげ〜!なにこれいいなあ!かっけ〜!」 と子供のようにはしゃぎだした。 「誰のですか?これって武器?」 と聞くのに、ああ、これはな・・・と城島が説明しだした。 なんなんだ?一体・・・といった顔でそれを見た山口は、同じように呆れ顔をしている国分と目が合いなんとなく笑ってみせた。 本堂の床に足を投げ出し、パタパタとうちわで自分を扇いでいる山下の髪がさらさらとなびいている。 緊張感のかけらもなく自然にトキオの3人の中に馴染んでいる様子に、なんだかほのぼのとした雰囲気が漂っていた。 しかし傍目には何も考えてなさそうに見える山下の頭は高速で回転していた。 さて、どうしようかなー。3人の武器はたいしたことなさそだけど・・・ あれから全然あの人から連絡なくてほんと暇なんだよね。 いつまで俺のことじっとさせておくつもりなんだろ。 んー・・・ そうだ、いいこと思いついちゃった! また後であの人に怒られちゃうんだろうけど、適当に聞き流せばいいや。 楽しいゲームで遊んであげますからね先輩たち。 険? 険ってなんや・・・? 山下のうちわに書かれている汚い文字に気づいた城島は首をひねった。 そんな背後からの城島の視線に気づかず、山口と国分にもパタパタと風を送っている山下。 うちわの反対側の面には「北斗の」とこれまた妙な言葉が書きなぐられている。 ついに我慢できなくなり城島は山下に尋ねた。 「それー・・・そのうちわってなんや?」 え? と山下が振り返る。 「ああーこれすか!?これはですねーオレの武器なんすよ! もう大事な大事なスーパー強い武器なんです!いいでしょー」 ふざけたものを持っているくせに、真剣な口調の山下に城島は思わず吹き出しそうになった。 「まじでそれが武器なんか?」 「そうです!」 まあ、昨日あれから指示なくて暇でウロウロしてたら拾ったんだけどね。 とは言わず、山下はあくまで真剣な態度を貫きとおすのに余念がない。 「ね。山下そのすごい武器オレに貸してよ」 茶目っ気たっぷりに国分が言うのに、え〜いやですよ!と山下は断った。 それにますます興味をしめした国分が、いいから貸せよ!と強気な態度に出た。 「うぅー・・・特別ですよ。大事に扱かってくださいね」 山下は仰々しくそれを渡した。 ふ〜ん。国分はお世辞にもうまいとはいえない“険”と書かれたその字を読む。 ----険もどき by中居---- なんだこりゃ!中居君が書いたのか! 険もどきってなんだよーと笑い、今度は山口に見せる。 「どれどれ。北斗の・・・?おお!北斗のケンか!!」 山口が大げさに驚く。 「ケンの漢字がちゃうからもどきか?寒いわ〜中居君」 城島が笑いながら覗き込んだ。 「俺のスーパー強い武器に文句つけないでくださいよ〜」 「あはは。すまんすまん。な、俺にも貸してーな」 そう言って城島は山口からそれを取りあげると立ち上がった。 腕をまくしあげ、ユリアは俺が助ける!と、ムキムキのポーズで気取ってみる。 「うわーリーダー!すげー弱そう!瞬殺されちゃうよー」 「太一!本当のこと言ったらリーダー可哀想だって!」 「あははは!城島君、明らかに北斗神拳使えなさそうですよー」 「うるさいわ!」 「あ、そうだ。リーダー、ちょっと」 国分はバックからマジックを取り出して城島に近づいた。 「え・・・うわ!何やねんおまえ!やめろって!」 「いいからいいから。この方が北斗の険ぽいよ」 「ぎゃー!やめろってー!」 「あーもう。ちょっと動かないでよリーダー!」 国分と城島は二人でなにやら揉み合ったかと思うと 「できたー!北斗の険登場!!」 と、国分が言い、城島の眉毛が海苔のようになっていたのに爆笑の渦が起こった。 「あははは!太一〜、それ書きすぎだって。本物の北斗の拳以上に眉毛太いんじゃないの?」 「いやー、こんなもんでしょ」 なにすんねん!と城島がうちわで国分を小突いた。 そして涙目で山下が 「あ〜〜返してください〜オレの武器」と冗談めいて泣きまねをするとますます調子にのった城島は「これのことか?」とうちわを指をさし、「北斗神拳奥義!」と叫ぶと あたっ! あたっ! あたっ! あたっ! あたっ! あたっ! あっちょう!! とおたけびを上げ人指し指でつつくマネをした。 「おまえはもう、死んでいる」 すると ずぶり。 嫌な音がした。 あれ・・・ 見るまでもなく指がうちわを貫通しているのが分かるこの感触。 「あ・・」 山下がうちわを通り抜けている指を見た。 「あ・・ははっごめんなー山下君」 太い眉毛をへの字にして城島は頭をかき、気まずそうに笑いながらそれを返した。 ひどいよ城島くん・・・ 山下はおもちゃを壊された子供のような顔になった。 今にも泣き出しそうに目をうるうるさせている。 「うわーひでーよリーダー!」 国分と山口がはやし立てた。 山下は膝をかかえじっとうちわを見詰めいていたが何を思ったか突然、うちわに開いた穴に自分の指を突っ込み、 「もういらないですよ!こんなの!」 と、その穴を広げびりびりと引き裂いた。 一瞬気まずい空気が流れた。 「あ〜あ〜泣かせた〜怒らせた〜!」 その場を治めようと国分と山口が城島を責めたてた。 「ご。ごめんなほんまに」 なんでこんなことぐらいでオレ責められるんや。と腑に落ちないながらも城島は謝る。 すると 「あははは。ま。いいんですけどね。ほんとに。 それよか暇じゃないですか?ゲームでもしませんか?」 さっき泣き出しそうだった山下がいたずらっ子のように微笑んでいた。 バッグの中に入っていた紙とマジックを取り出してきた山下は、 「みなさんもマジックペン入ってますよね?それ出してください」と言い 「告白ゲームしましょう」と意味ありげな顔をした。 「なんやそれ」うちわを壊してしまった城島は、そうも言えず素直にそれに乗るしかなかった。 「好きなドラマは?」 「一番楽しかった仕事は?」 「初恋はいつ?」 といったような、最初はどうでもいいような告白ばかりだった。 「じゃあじゃあ、ジャニーズで眉毛が最も太いのは誰だと思いますか?」 と、山下が冗談めかして城島を見ると、 「おいおい!なんやねん!」と城島が手で眉毛を隠し、どっと笑いが起こった。 すると突然それは震えだした。 プルルッ――― 山下はびくんとした。 ポケットの中に手をそっといれて、それをさわる。 が、震えはすぐにとまった。 え?なに? そしてまたすぐプルルッと震えだした。 しかしまた一秒もたたないまにすぐに切れてしまう。 それは何度も何度も繰り返された。 プルルッ――― プルルッ――― プルルッ――― うわーきた、やっぱりきたよ!しかもワンギリですか! なんだよ、このやり方!圧力かけてるつもり? これって今オレがやってることヤメロって意味だよね。 はぁ・・・むかつく。人のこと子分みたいに扱ってさ、何様なんだよ! いいじゃんこれくらいしたって。今すげー盛り上がってんのに、邪魔しないでくださいよー。 もうほんとウザイ! プチッ カッとなった山下はポケットの中でとうとう機械の電源をオフにした。 そうとも知らず「山下〜、おまえ中々いいお題出すじゃん!」と国分がケラケラ笑って誉め称えた。気をよくした山下は、じゃあ始めましょう!と3人に紙にその人物の名前を書くように促した。 城島のマジックで書かれた不自然な野太い眉毛がぴくぴくと動く。 書き終わった一同は一斉にそれを前に出し合った。 結果は予想通りでみんな笑いが止まらない。 山下のペースに乗せられ、トキオのメンバー3人はいつしかこのゲームにはまり込み白熱していた。 山下自身も携帯の電源を切ってしまったことなどすっかり忘れて、自分の発案したゲームに夢中になった。 「じゃあさー次はさ、このメンバー中で、絵的に最後まで生き残ったらだめじゃんて言う人書きましょう」 あははは!と本堂の真ん中に輪になって座っているみんなは一斉に声をあげ笑ったが 「なんの洒落やねん、それ」 そんなお題するなんてありえへん、と、城島がちょっと真顔になった。 「あはは〜マジだよマジ!」と国分がのたまった。 太い眉毛の城島の真顔があまりにも可笑しな顔だったからだ。 「筆跡ばれるとやばいから、あらかじめ4人の名前書いてそれに○するってことにしよう」 など山口も案を出し結構みんなは乗り気のようだ。 じゃあ書くよ〜 準備ができ、それぞれ紙を持ち後ろ向きになり真剣に丸をつける4人。 洒落だよ洒落・・・と。 城島はさんざん迷って、そんなん書いたらソイツが可哀想じゃんと自分の名前に丸をつけた。 「みんな書いた?折って真ん中に出して」 と山口が指示しそれぞれが折りたんだ紙を出した。 はいシャッフル〜と国分が紙切れを床の上で混ぜ合わせる。 「じゃ、開票しま〜す」 投票用紙を1枚取り上げたのは山下。紙を広げる動作にみんなの視線が釘付けになる。 「まずは・・・城島茂く〜ん」 おどけた声で開いた紙をみんなに見えるように晒す。 城島茂の名前を大きく丸が囲んであった。 「あーはっはっは!」 3人がどっと笑った。 うはーオレの書いたやつやな・・・と城島は思い一緒に笑う。 「次は〜」とまた1枚山下が読み上げる。 「城島茂くん」 「あーはっはっはっ!!またかよ〜!」 さらに盛り上がる3人。 「じゃあ次いきまーす・・・ はい、城島茂君!」 もうおかしくてたまらないという感じで、国分と山口はヒーヒー笑いながら涙目になっている。 「最後の一枚でーす。 ドコドコドコドコ・・・ジャーン! 城島茂君〜!!」 あ〜もう!さいこ〜リーダー!!! と国分と山口が床をばんばん!と手で叩いて喜んだ。 「あーはっはっは〜なんや。おまえらーみんなしてー」 とひきつりながら笑う城島に 「そうゆう自分も自分に○?やべーって!最高やべ〜!」 と山口が腹を抱えて笑っている。 「この結果はまずいだろ〜誰が誰に○したか丸分かりじゃんかよー」 「いや・・そうゆう問題やなくて・・」 国分の言葉に反論しようとした声も笑い声にかき消される。 「まあまあ、次いきましょうよ 次」 山下は一人冷静にゲームの再開を促した。 「ちょっ・・・なんやおまえらー」 「あっはっはあ!さすがリーダーすげえ人気〜!また一番人気じゃん!もうぶっちぎり〜!横腹いてぇ〜〜」 「あれ〜落ち込んじゃった?茂くん?ジョークっすよ!ジョーク」 「ていうか、山口君に○って城島くんでしょー!」 「ひどいわ茂くん!」 次のゲームのお題は「このゲームで一番惨めな死に様になる人」だった。 城島が○をつけた「山口」が1票、残りの3票は全て城島茂という結果になった。 さらに次は過激にも「この中で一人殺すとすれば誰?」だったが、またしても城島茂に3名の票が集まり、城島以外の誰もが彼に投票したという結果だった。これにはさすがに温厚なトキオのリーダーも正直むっとしていた。 しかも「山下」に○をつけた1票はどう考えても城島が印をつけたとバレバレだった。 「あ〜〜!!!オレに1票はいってるうぅ〜!!!」 「まじ〜!!ひっでぇ〜誰だよ山下にいれたやつ〜。かわいそうじゃんかよ〜!!」 「山下落ち込むなって。お兄さんたちが守ってあげるからさ!」 「せんぱい〜〜!!」 泣きそうな表情で大げさに嘆いた山下を、国分と山口がこれまた大げさに慰め城島に視線を送る。 な!なんでやねん! あまりにひどい仕打ちにいつもは喋りの城島も閉口する。 すっかり俺、悪者やん。 ていうか今3対1やん・・・オレ仲間ちゃうんか?トキオちゃうんか? こっちのがよっぽどかわいそうやん!! しかしゲームごときに本気で怒るのも大人気ないと思ってなんとか我慢し、笑い飛ばそうと思っても、ハ、ハ、ハ・・・とせつない声が出るだけだ。 なんかもう悲しくて涙出てきそうや。 これイジメとちゃうか? 「あ〜もうわし泣いちゃう」 と輪から外れ、膝を抱えて30過ぎの男が可愛らしく俯き泣く振りを試みるが、誰もがノーリアクションだ。 「もうーおれ、死ぬわ」 とふてたままぼそっと言うと 背後から低い声が聞こえてきたのに思わず顔を上げた。 ――死ねば ・・・え? なんや・・・・今確かに声がした。 誰が言うたんや! 3人に背中を向けていた城島は振り返った。 しかし誰もがその声に気づいていない様子で笑いあっている。 な・・なんや誰や・・・ 城島は洒落にならないその言葉を誰が言ったのかわからず、凍りついたように硬直した。 ――結局あいつ何しにきたんやろ。 変なゲームで引っ掻き回すだけ回した後、「それじゃみなさんお元気で〜」と憎めない笑顔のまま大きく手を振り去っていく山下の後姿を見送り、城島はそう呟いた。 あ〜あ超楽しかった〜たまにはこんな余興もいいじゃん。 けどトキオの内部事情わかってためになったな〜 みんなオレよりひでーじゃん。リーダーないがしろにしてさーこれ勉強なったな〜 あーそうだここ出たらNewSのメンバーでこのゲームやってみようかな〜? ・・・・・ や、やっぱやめとこ! と口笛を吹きつつ山下は軽い足取りで鳥居を抜けた。 と思わせておいて―――― やっぱ今ってもしかしてすごいチャンスじゃん!? 山下は素早くバッグを開けてライフルを取り出した。 一網打尽 いってみましょうか? とまた鳥居をくぐりなおしたとき え? 左足を下ろした地面のすぐ先ににそいつはいた。 うひょーーーー!! 山下は声も出さずに脱兎のごとく身を翻し走り出した。 「目があっちゃったよー!!!」 きもちわりぃ〜! ぬらぬらした鱗の皮膚にまだら模様の柄が気味の悪い、鎌首をもちあげた蛇の姿を頭から振り払うように走り続けた。 息が切れ足を止めた頃には、すっかり神社から離れたところまで来ていた。 ハァハァ・・・あーもういいや。 うー、汗かいちゃったよー。やだなぁ。 ・・・あ、家がある! 山が削り取られた海岸沿いの丘のふもとに、ぽつぽつと散らばる古びた民家を見つけた。 風呂とかあればいいな〜。 あ、でもゴエモン風呂とかだったらどうしよ。 俺、薪の風呂なんて焚けねぇよ〜。 くすくす 山下は汗で湿った服をパタパタと、涼しい山風と海風のあいだに吹かせながら、景色のいいその小路を下った。 2回目の放送からすでに2時間ばかりが過ぎていた。 トキオの三人と山下がゲームに興じている頃、三宅は長野に教えられたこの林の中で森田を探し歩いていた。 辿り着いた昨日の真夜中、林の中は月明りが時折木々の隙間から差しこんでくることはあったものの、漆黒の暗闇に支配されていた。 その中で歩き回るのに限界を感じ、夜が明けるまでほこらのような場所で休んでいた三宅だったが、朝日が昇るとともに、森田を探し求め歩き続けていた。 まるでジャングルのような原生林の中、ばさばさと木や草の枝葉を掻き分けるように進んでいた。 「あ・・・これってゴウのバッグ?」 林の斜面に突き出すように生えている木の枝にひっかかっていたバッグを見つけ、三宅はそれに手を伸ばした。 中を開けるが武器らしいものもなく、それが森田のものであるという確信は得られない。 しかし、確かにゴウはこの近くにいるはずだ! 「ゴウ!ゴウ!」 叫びながら辺りにくまなく目をやる。 ゴウ・・どこだよ! バッグがひっかかっていた、蔦をからませたその木が生えている下の斜面を覗き込む。 すると 「ゴウ!」 崖下に森田が血まみれになって倒れていているのを見つけると、三宅はその名を呼びながら斜面を滑り落ちた。 まるで死んでいるかのように横たわっている。 そして土ぼこりと血で汚れきったからだに駆け寄り、 「ゴウ!ゴウ」 と何度も名を呼び抱き起こすと、その身に体温を感じ三宅は思わず涙した。 「け・・・、けん?」 薄っすらと目を開けた森田が、自分の顔の前の三宅に焦点を合わせる。 「ゴウおまえ何やられてんだよ!」 泣きながら三宅がゴウの汚れた顔を両手で覆った。 「あー、オレまだくたばってなかったのか・・・」 森田は人事のように言うと、起き上がろうとしたが、ちょっと動かしただけで全身に猛烈な痛みが走った。 あまりの苦痛に顔をゆがめ、また三宅の腕の中にからだを預けるように倒れこんだ。 「ゴウ・・・」 三宅がどうしたらいいのかわからず、途方に暮れたように森田の傷を眺めた。 上半身は血にまみれ、撃たれたらしい右腿の傷から流れ出た血で右半身が赤く染められている。 「血がひどく出てるよ・・・いったいなんだってこんなひどい目に・・・」 森田の顔色にも血の気がなく、かなり危ない状態だということは素人目にもわかるほどだ。 まるで生きているのが不思議なくらいと思われるほどに。 「ゴウ、水」 バッグの中からペットボトルを出しその口に少しずつ含ませてやる。 それから・・と万が一と思い診療所の中からくすねてきた包帯やら、バンドエイドやらをバッグから取り出した三宅だったが、そんなものはこの森田の怪我の状態に何の役にも立たないことを知り苦笑した。 「ゴウ・・診療所に行こう」 「しん?りょうじょ?」 遠い目をして森田が苦しそうに三宅の言葉をなぞらえた。 「ああ、俺診療所にいたんだ。そしたら、智ちゃんが撃たれた長野君を診療所まで連れてきて。それで俺ゴウのこと聞いて今まで探してんだ。きっと長野君たち今もまだいると思うし、待ってるよ。あそこに行けばなんとかなるよ」 「そっかあ・・・長野君も撃たれたんだ。でも助かったんだ。よかった」 ほっとしたように森田は息を吐いた。 「そうだよ!だからゴウも行こう」 診療所にさえ行けばゴウの命が助かる。 そう。それはわずかな、そして最大の希望だった。 「きっと大丈夫だよ。な?オレが連れてくからさ」 三宅はその希望を森田に、そして自分自身に託すような気持ちで力強く言葉にすると、 本当に森田が助かるという確信に導かれ、からだの奥底から力が沸いてくるような気がした。 「オレ背負ってでも連れてくし」 しかしそんな勢いづいた三宅の言葉に森田は力なく首を振った。 「・・・な?なんでだよ!?」 三宅は森田のあきらめたような態度に、森田自身の生命を否定されたような気がして、声を張り上げた。 「だめだ。オレ足折れてるみたいで・・・足動かないんだ」 森田はすまない、という顔をしてみせた。 「足折れてるくらい、大丈夫だよ・・・オレがなんとかするから・・・」 そうは言ったものの、先ほどからみるみるうちに森田の容態が悪化してきているのが、手に取るようにわかり、三宅は混乱してきていた。 本当にこんな状態で動かしていいのもか、さっきの自信も揺らいできていた。 しかし黙ってここで時を過ごしても、森田を衰弱させるだけと思うといても立ってもいられなかった。 このままここにいたって、ゴウ弱っていくだけじゃん。 だけど、どうしよう。 こんなことなら智ちゃんに頼んで来てもらえばよかったよ・・・。 それか今から誰か探しにいってゴウ運ぶの手伝ってもらうか・・・。 だめだ・・そんな時間はないよ・・・。 悶々としている三宅の脳裏にV6のメンバーの顔が次々と浮かんだ。 いつも近くにいたのに、今はみんなの存在があまりにも遠く感じられる。 坂本君死んじゃったし、長野君撃たれちゃったし、他のみんな、どうしてるんだよ・・・。 ゴウまで死ぬなんて絶対やだ! そう思うと、森田を襲った人物に激しい怒りが湧き起こる。 「おまえさ・・・」 そんな三宅の思いも知らず、はぁはぁと、息も荒げに森田は三宅に話しかけた。 「なにゴウ?」 微笑んだつもりが涙が後から後から流れてきているのに気づかず、三宅は森田の口元の動きを見る。 「教室出るとき 俺待ってろっていったのにさ。なんで外出たらいねーんだよ」 精一杯虚勢を張って森田が、三宅を責めたてた。 「あ・・あれは、待ってたよ。校舎出てから物置の影で・・でもさ武装したやつら外うろうろ現れてさ、とてもそこにいられなくて、ちょっと場所移動したんだ・・・したらその間にゴウとすれ違いになったみたいで、俺もずいぶん探しまくったんだよ」 三宅が、子供のように言い訳をするのを森田は可笑しそうに見て、 「ははっ気にしてねーよ」 と笑った。 ――だって、おまえ、オレのことこうしてちゃんと探し当ててくれたじゃねーかよ? かなりカッコわりー姿になった俺だけどさ・・・。 言葉にはできない思いが森田にもあった。 苦痛よりも今は喜びの方が大きく、森田は軽口を叩くことによって幸せを噛み締めていた。 一瞬そのなごんだ空気に、時が戻ったような錯覚を覚え、ここが戦場だということも忘れそうになった三宅だったが、森田がすぐさま苦痛に喘ぎはじめると、現実に引き戻された。 「・・なあ。健 オレの頼み・・・きいて・・・くんねーかな」 息も絶え絶えな森田の、自分を信頼しきっているのような瞳に三宅はうん。と力強く頷いた。 時を同じくして、診療所では、長瀬と光一と井ノ原が、ベッドに横たわっている長野を心配そうに見守っていた。 「どうしよう・・長野君すごい熱だよ・・」 井ノ原が長瀬に、いましがた長野の熱を測った体温計を手渡した。 長瀬が手にしたそれを光一も覗き見る。 体温計の目盛りは39度近くを指していた。 「やっぱ撃たれた怪我のせいなのかな・・」 長瀬がうなだれると長野が、そんなことないよと弱弱しくも笑顔を向けた。 「長瀬のおかげで助かったんだし、ホント俺のせいでみんなに迷惑かけちまって・・」 申し訳なさそうな長野の様子にみんなは「そんなことないって!」と口々に言い 顔を見合わせた。 「俺らまた会えてさ、よかったよ ホント・・・」 しんみりとした長野の言葉にほんとだよなーと長瀬が頷く。 俺だけだったら心細くて、今頃パニクってたかもな・・ そしてそれはその場にいたみんなの思いでもあった。 どこからか見つけた薬の本を片手に、薬品棚の薬を眺めていた井ノ原がこれだ!と手にした錠剤を 「これが抗生物質で、こっちが熱を冷ます薬らしいよ。量がいまいちわかんないけど・・・」 と光一に差し出した。 「とりあえず、これ飲ませてみようよ」 うん。そうしよう。 不安ながらも3人は頷いた。 黙って何もしないよりは、はるかにましだと思ったのだ。 「オレ傷口消毒するよ」 オレの処置の仕方が悪かったのかもしれない・・・。 長瀬は長野の苦しげな様子に責任を感じていた。 このまま長野君の熱が下がらなければ・・俺のせいだ! 長瀬の落ち込みようは光一をも苦しめた。 「長瀬・・・」 と名を呼んだものの何と声をかけたらいいのかわからず、光一は無言で長瀬の横顔を見詰めるだけだった。 長野に薬を飲ませ、傷を消毒してから、包帯を巻きなおし寝かせると光一と井ノ原、長瀬は待合室でこれからのことを話し合おうと向かい合っていた。 「信じられへんけど、確実に仲間は減っとるし、俺らどうするか考えまとめなな・・・」 朝の放送で秋山まで死んでしまったことを知り光一は深く落ち込んでいたのだ。 いつも一緒やったのに・・・秋山。 おまえいたから、舞台だってソロだってなんとかやってこれたのに・・・。 死んじまうなんて・・信じられねーよ。 MA、おまえいなくなったらどうすんだよ・・・オレかておまえいなくなったら困るやん・・・。 秋山の笑顔を思い出し光一は、仲間が減っていくのをここで悔しがるだけで、何もできない自分の無力さをいやというほど思い知らされていた。 また、そんな自分自身にも苛立っていた。 そんな光一になぐさめの言葉をかけることも出来ず、長瀬も放送で聞いた死亡者の顔を思い浮かべると、力なく頷いた。 「俺たちどうなっちゃうんだよ。もう今日の17時までなんだよな、タイムリミット。」 絶望的な顔で井ノ原も言った。 「マシンガンにやられたらひとたまりもないよ」 長瀬がそう言いながら、はっと思いついたように部屋の隅に並べられているみんなのバッグに目をやった。 「武器・・・何みんな?」 そういえば、昨夜は武器を確認することを忘れていた。 まだ誰が何の武器を手にしているのかわからずにいるのに気づくと、3人は自分たちのバッグに視線を這わせた。 「オレはこれだったし」 長瀬がバッグから取り出した武器はロープだった。 「オレのはこれだ」 光一がポケットから取り出したのはサバイバルナイフ。 「あ、長野君のは?」 井ノ原が聞いたのに、ああ、と長瀬が長野のバッグを持ってきて目の前で開け始めた。 「ちゃんと持ってきたんだよ。ずいぶん重かったけどな荷物」 「すげーな。おまえ長野君のバッグまで持ってきたのか!」 驚きながら光一と井ノ原は何が出てくるのか覗き込んだ。 すると 予期しない武器に3人は驚きの声をあげた。 「これ・・・銃」 「ショットガンだよ!」 すげー・・・ 長瀬がそれを恐る恐る取り出して構えてみた。 「長野君こんな武器持ってたんだ。だったら黙ってやられることなかったのにな」 何気なくそう言った井ノ原に光一が、 「それなら、マシンガン持っとるやつと同じになるやん」とたしなめる。 「いや、そーゆう意味じゃなくてさ」 井ノ原が気まずそうに言うと 「わかっとるけど・・」光一も歯切れの悪い返事をした。 「と、とにかくさ。万が一だよ。万が一。もしもマシンガン持ってるやつに襲われたれさ・・・。 やっぱ戦うしか仕方ないじゃん!」 長瀬が興奮したように銃を掲げた。 「そら、そうだよな・・・」 と、井ノ原は同意したが、光一は曖昧な顔をした。 「うん。そやな。けどさ・・・やっぱそんな武器もっとったら、相手だってやる気なくても、敵と思うて、襲ってくるんやないかな?」 じっと光一に目を見られ長瀬は銃を長野のバッグに戻した。 「何が言いたいの?おまえ変だよ」 井ノ原が光一に詰め寄った。 「おまえ、長野君やられたんだよ?わかってんのかよ!?何甘いこといってんだよ!? そんなこと言って、襲われたらどうすんだよ!?武器持ってるのに使わないから相手にやられるんだよ!?」 「オレが言うてるのはそゆうことやないんや!」 光一も負けずに言い返した。 「そうやなくてさ。こっちが武器最初からもっとると、相手もひるむしそりゃ攻撃してくるやろ。けど、こっちが武器なんてもたな、相手だって・・」 そこで言葉が途切れたのは、話してる途中の光一の襟首を井ノ原が掴んだからだ。 「おまえなーそんな奇麗事通用するかよ!わかってねーのはおまえのほうだろ光一! 放送聞いただろ?みんな死んでるんだよ!仲間に殺されてるんだよ! 坂本君の死体見ただろ?あんなに穴あいて血流れて死んでたじゃねーかよ! 長野君も撃たれて今苦しんでんじゃねーのかよ!?おまえ武器も持たずにどうやって戦えっていうんだよ!?みすみす殺してくれっていってるようなもんじゃねーかよ!ああ!?」 坂本の死体が目に浮かんだ井ノ原は思わず興奮して叫んでいた。 長瀬が唖然としながら二人の間に「やめろって!」 と割って入ると井ノ原はようやく光一から手を離し押し黙った。 「イノッチ・・・」 光一は悲しげな瞳で井ノ原を見た。 「イノッチやめようよ。仲間割れはさ。光一だって、腕怪我してるんだしさ」 すると、光一の血で染められた腕に視線を這わせた井ノ原は、決まりの悪そうな顔になり ごめん。 と唇を噛んだ。 そうだ。わかってる。光一の言いたいことは。そしてそれが正しいことも。 でも、でも・・・ それじゃだめなんだよ!この島ではそれじゃ生き残れないんだ・・・ 井ノ原は激しく自己嫌悪に陥りながらも、やはり生き残るには武器を持ち戦うしか道はないという考えを曲げる気はなかった。 しばらく気まずい空気が3人の間に流れ、それぞれが互いの視線を避けるように俯いていた。 しかし、思いつめたような顔をしていた光一が静かに口を開いた。 「オレ、このゲーム止めたいんや」 ? 思いがけない言葉に長瀬も井ノ原も顔を上げた。 「絶対おかしいってこんなの。ありえへんよ。やっぱ、オレ中居くんと話してみたいんや。 中居くんがこのゲームの鍵握っとるんなら、それ止めるように説得せな」 「おまえ、何言ってんだよ!見たろ!?中居くんおかしくなってるの。その傷だって 中居君に傷つけられたようなもんじゃねーかよ」 長瀬が、とんでもないことを言い出した光一に詰め寄ると井ノ原も 「そうだよ!・・・そんなの無理だって!」 と真っ向から反対した。 「死なせたくない。これ以上死なせたない。イノッチ、長瀬、おまえのことも。みんなのことも」 「そんなこと・・・」 井ノ原が怒ったようなあきれたような顔をして反論しかけたのを光一は遮った。 「考えてたんや。昨夜から。中居くんがあんなんなってしまったのは、なんか理由があるはずや。ここで時間切れを待ってるくらいなら、中居くんに会ってそのわけを聞きに行ったほうええんちゃうかってオレ。社長の命令なんて、んなあほなこと信じられへんし」 一言一言、自分自身に言い聞かせるように光一が言った。 「光一・・・」 長瀬は光一の真摯なまなざしに、本気だということがわかりそれ以上何も言えず黙り込んだ。 「光一・・・おまえ死ぬぞ?」 井ノ原が長瀬の言葉の続きを引き継ぐように言った。 「中居くんはもう以前の中居くんじゃないんだよ?平気で大野をあんな風に殺して、みんなを恐ろしい人殺しのゲームのコマにして楽しんでるんだよ?」 「イノッチ・・・それでも。それでも確かめたいんや。行かせてくれへんか?」 「だめだ・・」 井ノ原は首を振った。 「そんな敵の陣地に乗り込むなんてわざわざ殺されるに行くようなこと、許せるはずないじゃんか。校舎は禁止エリアだってこと忘れてるわけじゃないだろ?」 「じゃあ。じゃあイノッチにはこのゲーム止める方法でもあるのかよ?」 「それは・・・・」 井ノ原が返事ができず口を閉ざすと 「光一。ホントに行くのか?」 長瀬が光一に最後の意思確認をするように口を開いた。 親友とのもしかしてこれが永遠の別れになるかもしれない・・・。 しかし長瀬は頭をよぎる思いとは別に、 光一に賭けてみたい。そんな風に思い始めていたのだ。 「ああ。行くよ。俺は行く。それに剛のことも気になるし・・・」 長瀬は頷いた。 確かに、このままここで時間が過ぎるのを待って、またあの掲示板に友達の名前を確認するなんてことにこれ以上は耐えられない・・・。 その長瀬の顔をしばし見詰め笑顔になると 「長瀬。長野くんを頼むよ」 「イノッチ・・・・長瀬を頼む」 光一はそう言い、必ず戻ってくるからと手を振り武器のサバイバルナイフをポケットに忍ばせ静かに診療所を後にした。 「光一・・・」 光一死ぬな! 言葉にできなかった思いを胸に、井ノ原、そして長瀬は親友の背が見えなくなるまでその姿を見つめ続けた。 |
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