18 思惑

… 2004年6月2日 11:00


11時になった時報が島の各所につけられたスピーカーから鳴り響いた。
それと同時に賛美歌が流れ、3回目の放送の始まりを告げた。

「はいはい〜11時になりました〜!!アイドル水泳大会に出演中のみなさーん!司会進行の中居でーす!では3回目の放送です。死亡者発表しまーす。
長野昌行君、井ノ原快彦君、岡田准一君、長瀬智也君、森田剛君、山口達也君、国分太一君、以上7名死亡でーす。いよいよ残り時間6時間切っちゃいました。禁止エリア増やしておくんでちゃんと時間内に仕事終わらせてください。E地区、G地区、H地区、K地区です。」


山下は村の中を歩いていた。
朝の放送ではケラケラと笑っていた彼だったが、先ほどの中居の愉快な放送には反応できずに厳しい顔をしていた。

明らかにゲームスタート時に比べて余裕がなくなっていることに、山下は自分でも気がつき始める。

三宅とはまた再会することになるだろうと考えていた。
いずれは戦わなければいけないのだから。
タイムリミットまであと6時間。
どう勝負をかければいいのか。
アドバンテージがあるのは、でも自分のはずだ。
今はそれを信じるしかない。
だけど慢心は禁物だ。
ほんの少しの油断が取り返しのない命取りになるのだ。この世界では。

携帯が新たな指令を出すために震えていた。
それを取り出し高鳴る鼓動を押さえつけ、ボタンを押し耳に当てる。
「もしもし」
相手の言うことを一言も聞き漏らさないように耳をそばだてる。

「はい。りょーかい」
電話を切り、ポケットにしまい込むと
山下は決意も新たに、これから始まる戦闘に向かうためへと足を踏み出した。

 

城島は禁止エリアを避け歩いていた。

もう、何もかも終わりや。
トキオ、みんな死んでもうた。
なんでオレは生き残っとるんや・・・。
なんであいつはオレを撃たなかったんや・・・。

自分を撃たずに去っていった、国分の後姿が目に焼きついていた。

あいつ・・・俺のコト・・なんでや。
けど、太一がマシンガンで山口を殺したのは事実や。
きっと坂本も殺したんやろ。
それ以外にも誰かを殺したのかもしれへん。
そして健が太一を殺した・・・

惨劇は目の前で起こった。
そして城島だけは無傷で、仲間の変わり果てた姿になすすべもなく立ち尽くしていた。
世界がかすんで見えた。
何もかも輪郭がぼやけて。色すら亡くしたようだった。
その世界の中、城島の目が映し出していたのは

―――――紅。
紅だった。
濃い緑の中で紅い鳥居がくっきりとした美しさと荘厳さをもち、どっしりと立っている。
城島はその下にあるかつての友の無残な姿――山口の死体そして国分の死体を見ていた。
ただじっと見下ろしていた。
二人のからだを染めていたのは
赤、だった。
血にまみれた二人の体。
風が、永遠に目覚めることのない二人の髪をやさしくなでていく。
静かな時に満たされ、辺りは密度の高い空気が充満していた。
放心していた城島はその息苦しさに頭をあげ、ゆっくりと視線を動かした。
マシンガン。
国分の手から離れ地面に投げ出されているマシンガンが目に入った。
それから目が離せない。
オレは何をしようとしてるんや?
そう思いつつ足は徐々に向きを変えていた。
一歩、
二歩、三歩・・・
一歩ずつ地面の感触を確かめるような、のろのろとした動作で近づいていく。
とうとう足元に当たるところまで来た。
震える手でそっとそれに手を伸ばした―――――


バサバサッ。
意識がまた神社へと飛んでいた。
城島を現実に引き戻したのは、樹木の枝で翼を休めていた鳥たちが一斉に空へ飛び立った音だった。

城島は足を止め空を見上げた。
鳥たちが群れをなして旋回している。

深いため息を吐き、視線を落とし城島は手にしていたレーダーに目をやった。
みんなが殺し合いをしとる・・・・。

城島はまた足を進めた。
どこに行こうという自分の意志はない。
ただこの道の先を進んでいる探知機の光を追っていた。
三宅だと思われるその光を。
それを追い求めている理由もわからずに。
バッグの中には国分の武器のマシンガンがあるが、国分の仇を討とうとか、相手を殺して最後の一人になろうとか、そんなことは思ってはいなかった。
少なくともそうゆう自覚はなかった。
強いて言えば、自分を突き動かしている理由を探すために歩いているのかもしれない。

何を思い国分はマシンガンを手にしたのか。
そして仲間に向けて撃ったのか。
いくら考えても国分の心情がわからなかった。
もし。
もしもオレがこの武器を手にしていたなら、太一と同じような運命を辿ったのだろうか?
城島は思った。
その答えは、歩き続けたこの先にあるのだろうかと・・・。

探知機上では、三宅の光が移動を続けているさらにその先で、二つの点が近づきつつあった。
その光に呼ばれているように城島は歩き続ける。



残り6人になってしもた。
剛はがくがく震える膝を抱え必死に耐えていた。
光一は今どこにおるんやろ。
中居君に会いにいくってやっぱ無理なんちゃうか?
考えたくなくても剛の頭の中では、光一の首輪が爆発するさまが浮かんでは消える、その繰り返しがされていた。

オレが疑ってどうするん・・・。
生きて、戻ってくる。
そう約束したんや。
だからオレが信じてやらへんと。
それくらいしかオレにはでけへんのやから・・・。
だけど・・・

掲示板に目をやり、そこに光一の名前が出てないことにほっとする。

何度も何度もそんなことをやっているうちに現実感がなくなり気がおかしくなりそうだった。

残り6人か・・・。

6人。

何故かそれが胸の奥にひっかかったような気がした。

6人って・・・。
今生き残っているはずのメンバーを指折り数えてみる。

しかし何度数えても、その指は5本で止まってしまう。

あれ・・?だれか俺、忘れてるんかな?

もう一度死んだメンバーを思い返し、ゆっくりと数えなおしてみる。

そしてはっと気づいた。

まさか・・・
そんな・・・
光一・・・あいつやっぱヤバイんとちゃうんか!?


まだ誰も傷つけてない日本刀を握り締めながら、剛は光一が会いにいこうとしている相手を思い浮かべると祈るように頭をたれた。

そして顔を上げたとき胸にある決意が生まれていた。

刀と地図だけを持ち、剛はそこを出ると遊園地内を歩き出した。




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