19 戦意 … 2004年6月2日 12:00 午後の太陽がじりじりと照りつけ肌を焦がす。 光一は額の汗をぬぐった。 目の前には吊り橋があった。 校舎へと向かう道は、谷と谷をつないでいるこの吊り橋を渡れば早く着く。 地図で確認していた光一は、剛と別れてからここを目指し遊園地を突っ切ってきたのだった。 しかしこの吊り橋を一目見て光一は眩暈を覚えた。 老朽化が激しく、かなりぼろくなっている木の桁がこれまたぼろくなっているロープで単純に結わえられているだけの、まさにその名の通り吊られているだけの橋。 それが20m程の長さで向こうの谷へ架けられている。 人を渡すためというより、人を落とす趣旨で架けられているのではないかと思われるほどのふざけたものだった。 吊り橋の下は急流の川だった。大きな岩がごろごろと川の中にいくつも姿を覗かせていた。その岩肌を削り取るようにすさまじい勢いで川は流れている。 橋から下のその川までの距離も相当ある。 落ちたらひとたまりもないだろう。岩に頭を打ち付けたりしたらまず助からない。 高いところに慣れているはずといっても、絶対に好んで渡りたくなるような橋ではなかった。 しかも吊り橋で繋がれている両端の谷は切り立った崖になっていた。 上から下を見下ろす。 草の生えてない赤い土肌のそれは真ん中あたりがえぐれたようなカーブになっていて、無事に下に滑り落ちるということはまず期待出来ないだろう。 また出来たとしても、急流の川を超え向こう岸に渡るという困難が待ち受けている。 立っているだけでもくらくらする景色だ。 しかしこの橋を渡るしか道はない。 迷っているほど時間はなかった。 覚悟を決めて吊り橋へ恐る恐る足をかける。 橋に振動が伝わり、それが隅々に伝達すると光一の足元に返ってきて大きく揺れた。 ゆっくりゆっくりもう片方の足を踏み出す。 重心をとり揺れを最小限に抑えながら一歩ずつ歩く。 腐りかけている足元の木の板がなんとも頼りない。 体重を移動させるたび、ぎいっと全体がきしんで揺れる。 暑さとは違った汗を拭いながら、光一は片足ずつ前へ出すのに懸命になっていた。 ようやく、あと5mといったところまで来ていた。 もう少しだ。 思わず走り抜けたくなる衝動をこらえ、足元を注意深く見ながらぎいっという嫌な音を鳴らしその足をゆっくりと進める。 「おつかれさま〜」 声に顔を上げると、さっきまでいなかったはずの山下が、自分が降り立つべき吊り橋の向こう側に立ち、こちらをニコニコと眺めていた。 まるで光一がこの吊り橋を渡るのを知っていて待っていたかのように。 しかもあと少しで渡りきれるという、絶妙なタイミングで。 光一はその笑顔に得体の知れない恐怖を感じ言葉を失った。 「さすが光一君だね〜よくこんな橋渡る気なったね。落ちたら死んじゃいますよ?」 「山下・・・」 やばい・・・ 反射的に光一は後ろに下がっていた。 後ろ向きのまま吊り橋にかけた足が、大きくそれを揺らした。 うわっ かろうじてバランスを取り直し、低い体勢を整えた光一はぐらぐらと揺れる中、山下の手がゆっくりと自分に向けられたのを見た。 その手にはライフル。 ! 逃げようにも逃げられないこの状況。 光一はサバイバルナイフを忍ばせているポケットに手をやった。 しかし、ナイフとライフルでは勝ち目はない。 しかも今自分が立っているのは、大風が吹けばあっという間に吹き飛ばされてしまうような心もとない吊り橋の上だ。 落ち着け、落ち着け・・・・ 光一は自分に言い聞かせる。 「おまえが、殺してたんか。そうやって」 からからに渇いた喉の奥から絞り出した声は震えていた。 「そうだけど?それが何か?だからさ。死んでください。光一君も」 山下が引き金にかけている指に力を込めた。 光一が絶望の色の目でそれを見た瞬間。 ババババン・・・! 鋭い音が響き渡ると同時に吊り橋も震えた。 え? しかしそれは目の前の山下が放った銃弾の音ではないことを、自分の背後に奪われている山下の目に、驚愕の色が浮かんだことから光一は知った。 なに? 光一が注意深くゆっくり振り返ると、今自分が渡ってきた吊り橋の向こう側に、銃を向けて立っている三宅が見えた。 銃口からは白煙が上がっている。 撃ったのは健!? しかし三宅の視線は自分を通り過ぎて、後ろの山下にあることがわかった。 吊り橋を挟み、山下と三宅は見つめあう。 な・・・なんだよ健君!オレの方ばっかずっと見て! オレを殺すつもり?でも光一くんだってこのままじゃ・・・。それともやっぱ皆殺し!? なんだよわけわかんねーよ。ていうかどっちにしてもやばい! 三宅の武器は散弾銃なのだから、どこに弾が流れていくか全く読めない。 かなりの緊張を強いられ、どう動くべきか山下と光一の判断も狂う。 血だらけの三宅は無表情のままで銃を構えている。 ――が その目に炎が灯った。 「あぶない!」 バンバンバンバン・・! 銃が撃たれた瞬間、光一はかがみこんだ姿勢で吊り橋を一気に駆け抜け、橋の向こう側に、ちょうどスライディングした格好で滑りこんだ。 一方、咄嗟に動けず立ち尽くしていた山下の手に衝撃が走った。 三宅の撃った弾が岩に当たり、砕け散ったそれが山下のライフルにヒットしたためだ。 「うあ!?」 持っていたライフルが指を離れ、あらぬ方向へと弾き飛ばされた。 駆け出しその自分の武器へ手を伸ばした山下は、なんとかそれを掴むのに成功した。 しかし。 大きく踏み出した右足が、地面じゃない場所に降りていた。 必死に足を素早く動かすが、むなしく空を蹴り上げるだけだ。 バランスを崩した山下は、上下に激しく揺れる自分の視界に谷底の川が写ったのを見た。 その川に吸い込まれていく感覚が自分を襲う。 「うわあああああ!」 悲鳴をあげその身を崖下に躍らせた山下。 「山下ぁーーーー!!」 そのとき自分の体が重力に逆らい、ぐんと、持ち上げられたのを感じた。 見上げると光一の顔があった。 光一の手が自分の左腕を掴んでいる。 「こう・・・いちくん・・」 「山下!ライフルこっちに投げろ」 山下は自分の右手がまだライフルを握り締めていたのに気づいた。 自分でも呆れながらそれを見つめる。 けど・・・ 「やだよ。これは・・」 山下は首を振った。 「いいから!おまえ死にたいんか!?」 光一の瞳が鋭く光った。 山下は仕方なしに自分の手にしているライフルを、光一のいる上空に向かって投げた。 うまい具合に光一がそれを掴むと手元の地面に置いた。 バンバンバン・・・! そうしている間も二人の周りの崖の土を三宅の撃つ弾が削っていく。 「山下!早く!」 光一が半身を崖に乗り出させ、もう一方の手で山下の右腕を掴み引っ張りあげる。 傷ついた腕がまた痛み出したが、それでも光一はその手を離すことは決してなかった。 両腕に渾身の力を込める。 山下も落ちまいとなんとか手を借りて這い上がると、二人同時に茂みへと走りこんだ。 揺れる。揺れる。 吊り橋が揺れている。 健・・・! 城島は吊り橋を渡り始めた三宅を、岩陰から息をひそめ見ていた。 ようやくその背に追いついた城島の存在に、三宅は吊り橋を渡るのに必死なようで気づいてない。 山下と光一にも銃を向けたのだから自分を見つけるとやはり撃ちこんでくるだろう。 それにこんな状況でこの吊り橋渡るなんて・・・・ けど、今なら撃てる余裕もないはずや。 手にしている国分のマシンガンが、城島に大胆な行動をとらせていた。 探知機ひとつなら絶対に後を追うなんてことはしてなかったろう。 城島は前へと少しずつ身を乗り出していた。 はぁ・・・はぁ・・・ 走って荒く息づいた光一と山下の2人とも、三宅の銃撃から逃れたようで傷はなかった。 光一はしっかりと山下のライフルを握り締めていた。 「すいません。それ返してもらえますよね?光一君」 一息ついてそう手を伸ばした山下に、光一は呆れたような視線を向けると、それには答えず山下の頭を押さえつけた。 「ばか、頭引っ込めろ!撃たれちまうぞ!」 そうっと茂みの隙間から様子を伺うと、三宅が吊り橋を渡ってくるのが見えた。 ゆらゆら揺れるそれをバランスを取り彼は渡ってくる。 「もうオレ武器ないし、どうすんだよ!」 山下は青くなって駆け出した。 おい!待てよ山下! 光一もその背を追いかける。 ぎり・・ぎりぎりぎり・・・・・ 自分の撃った弾が吊り橋をつないでいるロープをかすったせいで、嫌な音を立てて軋んでいた。 三宅は逃げた二人の後を追って、吊り橋を早く渡りきらねばと足早に前へと進んでいた。 右足がようやく吊り橋を渡り終え地面を踏み、左足もまたそれを踏んだ瞬間、 ぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎりぎり ―――――――バァーーーーーン! 弾けとんだ太い綱が空を舞った。 しかし三宅は後ろを振り返ることもなくそのまま前方へと駆けていった。 ついに寿命がつき過度の負荷に耐えられなくなった吊り橋は、ちぎれた綱と共に空中ブ ランコさながら大きく空に曲線を描いた。 それと共に空中を舞っている者がいた。 ぐしゃっ! 荒く削られた岩の上で目を開いたまま、その人物は二度とまばたきをすることはなかった。 谷と谷のあいだを疾風が駈け抜けていった。 まるで城嶋の魂を運ぶかのように。 【 城島茂 死亡 残り5名 】 ひときわめだつその掲示板はまた新たに名前を出していた。 城島君も死んでしもたんか・・・。 早く・・・早よいかな・・・ はやる気持ちで遊園地を抜けしばらく歩くと、視界が開けた。 「なんやここ・・・」剛の口をついて出た言葉は弱々しく、風に流されていく。 どこかで見た風景だと思ったのは、ゲームが始まって最初に辿りついた崖の、反対側の崖に立っているからだった。 地図で確認し、校舎へ出るには橋を渡るのが早いと思って走ってきたものの、まさかその橋があのぼろい吊り橋のこととは想像もしていなかった。 この吊り橋渡るんだけはあかんていうてるやろ・・・。 どないしよ。 それでも、向こう側の崖を見渡せるところまで、重くなった足を進める。 あれ・・・? 剛は目の前に広がる絶景を目にした瞬間、記憶の中の景色との違いに気づいた。 「切れとる・・・」 向こう側につながっていたはずの校舎への足掛かりである吊り橋は、無残にも原型をとどめていなかった。 切れたロープの切れ端にかろうじて、まだぶらさがっている幾つかの木の桁が空中に泳いでいた。 それらが風に揺られ時折カタカタと頼りなげな音を発している。 思い切ってちらり、と下を覗く。 絶壁の谷底に、岩にぶつかり飛沫をあげながら勢いよく流れている川を確認する。 あかん! すぐに首をひっこめたものの光一もここを通ったはずだと気づき、まさかここに光一落ちたとかはあらへんよな・・と、見たくはないがもう一度川面を覗き込んだ。 すると----- 人が死んどる!! ぎょっとしながら恐る恐るそれを見る。 光一じゃないよな? ・・・・・ 大きな岩に頭を打ちつけ天を仰いで絶命しているのは城島だった。 うっ・・・ 剛は思わず口を押さえ目を閉じた。 距離があったからまだましだったもの、まともに見たら耐えられなかったはずだ。 腰を抜かした剛は、はいつくばってその場所から離れようとした。 「お、おちつけ自分!光一んとこいくんやろ!」 恐怖を取り払うように声を出して、自分に激を入れた。 地図を開き、地理に沿って指をなぞる。 近道・・・近道は――― 川と川がせばまっている場所があった。目を走らせると・・・ あ、このちっこいの・・・これも橋ちゃうか!? 剛は急いでその道へと駆け出した。 困ったな〜 山下はいかにも面白くなさそうにそれを黙って睨んでいた。 自分の半歩前を歩いている光一の手にしているその武器を。 光一はその視線に気づいていないのか、それとも気づいてない振りをしているのか、ただ黙々と歩いているのが気になる。 まあ、でも撃たれないだけマシなのかな。 ていうか何考えてんだろ光一君は一体。 自分が殺されそうになった相手、助けるなんてさ。 ある種の感動を覚えながら、武器のこともあって山下は自分が撃ち殺すはずだった光一と行動を共にしていた。 ふと光一が足を止め怪訝そうな顔で山下を見た。 「なんでついてくるねん?」 「ていうか光一君オレ撃たないんですか?」 「オレが撃つと思てないからついてきてるんやろ?」 ズバリご名答。 いよいよ感動を覚え山下は曖昧に頷いた。 「なんで撃たないんですか?」 「それは、オレはおまえを殺すためにこれを手にしてるわけやないからや」 「じゃあ、何のために?」 何か自分が馬鹿になったかのような質問だな、と思いながらも山下は聞いていた。 「おまえを助けるためや」 助ける? 思いがけない答えに山下は絶句した。 「助ける」の意味がわからなかった。本当に自分の頭が悪くなったんだと思うくらいに。 オレを助ける? 光一君が? 光一君を殺そうとしたオレを? ・・・ていうか、助けるってホント何? まるで「助けてあげる」っていわれてるみたいなんだけど!? オレは自分で自分のこと守れるからイラナイし!子供じゃないんだからさ! まるでオレのコト、か弱いっていってるみたいじゃん!! まったく何言ってるんだか!この王子様は。 とはいえ、つい先ほど命を救われた光一にそんな反論が出来る訳も無く、山下は沈黙した。 光一はそんな山下の胸中も知らず、立ち尽くしている山下に真っ直ぐ視線を向けた。 「おまえが今までどんな気持ちでこのゲームに参加して、誰の血でその手汚したのかは聞かへん。聞きとうもない。けどな。これだけは言えるんや。最後の一人になるまで次々仲間殺すなんてことは絶対に間違うてる」 山下は口を挟まずそれを聞いていた。 「このゲーム終わらせることできるはずや。自分の手で。今ならまだそれができるんや。自分が殺されそうになって、その相手殺しとったら終わらへん。憎しみが憎しみを生んでそれが勝手に大きくなりよる。どっかでそれ断ち切らんといかんのや。殺した罪は消えなくても、そんでも出来ることはまだあるはずや」 はあ・・つまんねぇー!! 腑に落ちない言葉は山下をさらに苛立たせた。 白々しいことよく真顔で言うね。やるかやられるかの殺し合いの場で、そんな正義論が何の役に立つっていうの? 崇高な理想主義者ってことですか?光一君は・・・ しかし山下は、相変わらず黙し続け納得してるような振りをした。 まあよく分かんないけど、自分撃たれないってことだけ分かればいいんだけどさ。オレは・・・ 「おまえはどう思うか知らんが、俺はそう思っとるし、自分の信じた道いくだけや。 オレこれから中居くんと行くんや。このゲームとめるよう話にいくんや」 そう言い足を速めた光一の背に山下も駆け出した。 国分を殺し吊り橋を渡った後、光一と山下を見失った三宅は、ただふらふらとどこへともなく歩き彷徨っていた。 目の前にぽっかりと口をあけている暗いトンネルがあった。 その光の届かないトンネル内に足を踏み入れる。 ひんやりとした空気を感じながら前へと進む。 暗闇が空虚な心を覆い尽くしていく。 これまでとってきた行動の基準が三宅自身にはわかっていなかった。 そして今もどうしようという意図もなく、次にとる自分の行動すら予測できないという有様だった。 最初は、皆殺しにしようと思っていた。 誰彼かまわず殺せると思っていた。 だけど・・・ わからなかった。 何故それができないのかを。 三宅は首を振る。 いいんだ。別に・・・理由なんて。 ただ、そうゆうふうになっていた。 それだけなんだ。 無意識の内にとった行動に意味を見つけることをやめた三宅は、真っ暗な道を進み続けた。 三宅自身は気づいてはいなかった。 仲間を殺したり、殺意を向けた者に遭遇した際、彼の胸に青白い火花が散ることを。 森田を殺した自分を相手の中に見つけたときに。 しかし、三宅の心はそれを自覚するのを恐れていた。 何で光一君、山下助けたのかな・・・。 山下君に殺されそうになってたくせに。 まだ信じてるんだ・・・人を。 殺したり殺されたりしてるこの中で。 だけど、オレはもう殺した。 そして殺し続けていかなきゃいけない。 「どんなにつらくても生きるんだ」 オレが殺したゴウとの、それが最後の約束だから オレは生きる。 この狂った世界で。 オレ自身が狂ったとしても。 もう、 狂ってるのかもしれないけど。 ポチャーン。 ポチャーン。 薄暗いトンネルの天井から一定の間をおいて水滴が落ちている。 足元に水溜りができていた。 覗き込んでみると自分の顔がぼんやりと映し出された。 その顔は、覇気のないまるで死人のようなものだった。 ポタ。 その水溜りに、三宅の涙が波紋をひろげた。 殺して、みんなを殺して 生きる・・・ 最後の一人になる。 けどオレ・・・みんなのこと殺せると思う?ゴウ? ほんとにゴウはそう思って・・・それを望んでいたのか? 三宅はその場にずるずるとしゃがみこむと、冷たい地に腰を下ろした。 なあ。ゴウ オレほんとはさ・・・ 生き残らなくてもいいんだよ。 このゲーム始まったときからオレそう思ってたんだ。 誰かを殺して自分だけが最後に生き残るなんて、まっぴらだって思ってた。 殺すくらいなら殺された方がましだってさ・・・。 ゴウもそう思ってたんだろ? だから、オレにいったんだろ? 「オレを殺してくれないか」ってさ・・・。 あ・・・。 三宅の胸に森田の声が蘇った。 あのときのまなざしが蘇った。 ゴウは・・・。 ゴウは知ってたのかな・・・。 殺される方がつらくないって。 殺して生き残る方がずっとつらいって。 それ知っててオレに言ったのかな。 そりゃないよ・・ゴウ。 そんな自分だけずるいよ・・ゴウ。 「どんなにつらくても生きるんだ」 呪縛のように自分を縛り付けているその言葉 オレ ゴウが言ってた意味オレ履き違えてたのかな・・・。 会いたい・・・もう一度。 ゴウに会いたい!! 三宅は走り出していた。 今まで彷徨っていた心がやっと本来の場所へ帰ってきたような感覚だった。 「ゴウ・・・」 呟いた名前をもう一度繰り返す。 今度ははっきりと声に出す。 「ゴウ!」 視界が明るくなった。 光だ。 暗闇に差し込む一筋の光は救いのように見えた。 三宅は光に導かれるように、足を進める。 トンネルを抜けると地図を広げ、自分の位置をすぐさま確認すると、ゴウのいる診療所へと駆け出した。 「残り5名になったわよー。山下くん頑張って!うふふ。このまま勝たせてもらうわ!」 吉原は電卓片手に、ウキウキとモニタに目を走らせていた。 「光一君がちょっと曲者よね〜。邪魔だわー。早く死んでくれないかしら!」 ぺらぺらと吉原が独り言を言っているその横で、真剣に頭を抱えて考え込んでいるのは議員の中田だ。 「三宅は大丈夫なのか!?もっとガンガン殺しにいかんか!!」 5人に賭けた中で唯一生き残ったターゲット、三宅にさぞご不満の様子だった。 「全滅だけは勘弁してくれよ」 高橋が、島を飛んでいるリモコンヘリに搭載されているカメラが、頭のつぶれた城島の画像を映し出しているのを見ながら杉田に言った。 「ははは。まぁ見せ場はこれからですよ。ゲームが終了し、みなさんの選んだ戦士が見事勝者になった際は、表示どおりのオッズで支払いさせていただきます。 では、残りの時間をお楽しみください。」 「ふふふ。オッズに”全滅”の選択肢があったけど、それはないわよね。 そのためにあの子がいるんだから」 自信満々といった感じで吉原が言ったのに杉田は頷いた。 にこりと笑って杉田が慇懃に礼をし部屋を出て行こうとした。 その背に 「もし、誰も当たらなかったらあなたの丸儲けってわけなのね〜」 茶化したように吉原が言った。 「丸儲けとはいきませんね。私もこの戦士たちにかなりの額を注ぎ込んだのですからね」 振り返った杉田が、冷たく光る眼光で答えた。 |
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