23 真実

… 2004年6月2日 15:30


「光一!」
傷の様子を見ながら、なんとか移動を続けていた光一が振り返った。
「剛!」
お互いが駆け寄り約束どおり再会を果たした。

――残り時間は1時間30分。

「光一怪我したんか!?」
「ああ、でも流れ弾がかすっただけや。心配いらん」

肩口に巻いた布切れが赤く染まっているのを見た剛が心配そうに言ったのに、大丈夫やと光一は笑った。
しかし剛は笑えなかった。
まさに命がけで光一が行動を起こした証の傷は、剛にとって痛い現実だった。
それでも今目の前に光一がいることはまるで奇跡のように感じられ、感謝したくなるほどだった。

「もう、会えへんかと思ったけど、よかった会えて」
「おれもや。おまえに謝らないかんと思って・・・」

なんで?と剛はその意味を推し量る。

「中居君とは会うことできたんか?」
「ああ。でもあかんかったから、ほんまごめん。
三宅まで死んで・・・また仲間、助けられんで死んでしもた・・・」

掲示板は新たに三宅の名前を映し出していた。

「いや、おまえのせいやない」

しょんぼりした光一の肩を叩いた剛も、心では同じように落ち込み苦しんでいた。
苦渋の表情で光一はこれまでのいきさつを話しだす。

「そうなんか・・・山下と携帯で繋がってるんか中居君」
「ああ。それにやっぱり中居君も俺たちと同じで命握られてるんやろ。社長の命令いうてたけど、社長がこんなこと許すはずもないし、きっと黒幕がおってあやつれらてるんちゃうんか。中居君にはゲーム止めらへんのや」

中居君もそうゆう意味では被害者なんだ。このゲームの・・・。

光一は、『オレにはこのゲーム止める権限はない』といった中居の怯えたような目を思い出す。

「そやろな・・・じゃあ、どないしても無理なんやな・・・」

剛がため息混じりに言った。

「もうオレらと山下以外残ってるものもおらん。このゲームいまさら止めようないんかな・・・」

光一が弱音を吐いた。

「オレ今になって気づいたんやけど・・・中居君もゲーム参加者の中にはいっとるんや」

ためらないがちにそう言った剛に「それ、どうゆう意味?」と鋭いまなざしで光一が問いかけた。

「中居君もいれて23人なんや。23人がこのゲームの参加者やって一番最初にいうてたやん」

23人?
光一はこのゲームの参加者の人数を改めて確認した。
トキオにV6、滝翼に嵐と秋山 山下 俺ら・・・で22人ということは
そうか!あとの一人は・・・

「中居君や」

二人は顔を見合わせる。
確かに中居君は最初の説明で、この23人で殺し合いをすると言っていた。

「じゃあ、最後に生き残れる者は一人っていうことは、中居君がそのひとりになるつもりちゃうんか?オレたちを全滅させて・・・」
「けど、中居君は『おまえらの中で最後の一人になるまで戦うこと』って、言うてたし」

そうか・・

「じゃあ23人の中に中居君が入ってるってことは・・・監視役として、という意味で単純に人数に数えられているちゅーことなんか」

・・・いや。
違う―――

光一は自分で言ったことを頭の中で否定した。
山下の携帯に中居君は指示を送っている・・・それがどうゆうことなのか。


光一は自分の言葉を一言一言確かめるようにゆっくり話し出した。

「中居君は優遇されてるちゃうんかな。武器を持ってオレらと直接戦うんじゃなしに、山下の携帯を使ってこのゲームに参加してるってことちゃうんか」

なるほど、山下を使って誰かを殺していたのなら、間接的だが中居も殺し合いに参加しているということになる。
剛は頷いた。

「そーか。オレたち22人分のバッグの一つには中居君と通じる携帯が入ってた。
それを手にしたのが山下だった・・・ちゅーことなんか。それで中居君は山下に指示してこの殺し合いに参加しとるから23人で殺し合い・・・」

確かに山下は携帯を「これはオレの武器なんです」と言っていた、その言葉を光一は思いだす。

山下の言葉どおりであるとすれば、中居は山下に連絡をとるために、というよりも武器の携帯を手に入れたのがたまたま山下だったから連絡をとっていたということになる。
もし他の人間に携帯が当たっていたなら、その人物に指示を与えていただろう。

しかしどうも、いまひとつ納得ができず二人は黙り込んだ。

「たぶん、そうなんやろな・・・けどその携帯を持ったやつが言うこときかない可能性もあるちゃうん?それに、なんでそんなまどろっこしいことするんやろ?」

剛が疑問を口にした。

「さあ・・なんやろ」

そうだ。黙って自分たちを戦わせておくに徹せず、水面下でこの殺し合いそのものに干渉している、いや干渉させられているというべきか・・・中居くんにはそうしなければいけない理由があるはずや。

それがわかれば逆になにか、打つ手が見つかるのかもしれない。
それはどんな理由からだろう。
光一は押し黙って考えた。
剛もその理由を考えてみる。

ルールどおりオレたち22人の中で一人が生き残ったとしても、最終的に中居君を加えた23人の中で生き残るのが一人であるとすれば・・・。

恐ろしい想像にかられ剛はそれを頭から追い払った。
剛と並んで歩き続けながら、光一も頭を悩ませるが答えは見つからない。

「おまえら買われたんだよ」中居君は言った。
それは・・・オレたちだけちゃう。たぶん中居君も同じなんや。
買われたんや。
このゲームを仕組んだ狂ったやつに。オレたち23人全員が。
そんな狂ったやつの考えなんて、わかるわけあらへん。


答えは巡り巡ってスタート地点に戻ってきてしまった。

結局、このゲームの23人目が中居であるということと、その中居が山下に指示を与えて、殺し合いに参加しているということ。
それがわかっただけで、理由まではわからないのだ。そして打つ手も見つからない。

けど、なにかが、なにかがひっかかってる・・・。
喉の奥にひっかかっている何かを思い出せず、不快さに光一は顔を曇らせた。

「どないするんや。もう時間あらへん。オレらが逃げ切ったとしても、この首輪が外れんことには、どうにもならん」

剛の言うとおりだった。
例えこのゲームの裏の事情がわかったとしても、もう遅すぎる・・・。

刻々と過ぎていく時間がそう訴えていた。
首輪が外れない限りどうにもならないのだから。

・・・首輪

そのフレーズが引っかかっていた何かを光一に思い出させた。

電気が走ったかのように、光一のまぶたにそれは急に浮かび上がった。
モニタに表示されていた首輪の設計図のような立体画像。
そしてその横に映し出されていたあの・・・

「かぎ」
「え?」
「鍵や。鍵があるんや!」

光一は剛にモニタで見た映像を説明した。

この首輪に!鍵が?
お互いがそれを見詰め合った。

しかし鍵を差し込むような箇所はどこにもない。

もっとよく思い出せ!

中居の部屋のモニタで見た二つの首輪の画像をもう一度思い描く。
鍵のある首輪と、鍵がない鍵穴だけの首輪。

鍵・・・。
オレの首輪も剛の首輪も表面に見える鍵穴はない。
ということはオレらのは鍵のあるほうの首輪か?

しかしどこにもそれを確認できないということは、表面から見えないところに取り付けられているのだろう。

しかし一体それは何の鍵なんだ?

この首輪が外れるときはただの一度。
しかもたった一人だけに訪れるはずだ。
このゲームの勝者として生き残ったときに。

それまでは決して外れないはずだ。

それなら何のために鍵が必要なのか?
首輪を外さなくても鍵を取る方法がもしかしてあるのか?
それに、鍵穴だけの首輪は誰がしてるんや?

鍵と鍵穴・・・
ひとつの鍵と、ひとつの鍵穴・・・・

一体どうゆうことなんや?・・
光一と剛はそれについて頭を働かせてみたが、やはり謎は分からない。

「中居君にもう一度会いにいくんや!」

鍵のことを聞きに!
そう奮い立った光一を剛は唖然と見詰めた。

「もう一度って・・・あかんやろ。無理や」
「そうかもしれん。でも最後まで諦めたらあかん」

あきらめたらそこで終わりや。
このまんま何も知らんと、ただ時間切れ待っとるだけなんていやや。
最後の最後までオレはオレのやり方で戦っていたい。
例え、その先に待ってるものが死だとわかってても
せめて、ほんまのことだけでも知りたいんや・・・!

傷を負い、せまりくるタイムリミットにもあくまで気丈な光一。
信じられないという顔で剛は光一の言葉を聞いていた。
こうしている間にも時間は過ぎ、禁止エリアは増えていく。
掲示板を見上げ地図を確認し、安全地帯へと追い込まれていく自分たち。

「やっぱり、あかん・・・」

中居君がまだ、さっきの場所にはいるとは限らない・・・むしろその可能性は低いだろう。
それに中居君は禁止エリアの影響を受けることがないはずや。だとしたら、オレたちが行くことがでけへんそのエリアに、すでに移動しているかもしれへん。

光一もそれに気づいていた。
それでも何か手はあるはずだ。

何か・・・
そうだ!

「山下。山下ならなんか知っとるはずや」
「山下・・・」
「中居君と連絡とってたから何か秘密知ってるはずや。山下探して、それ聞くんや。
そんで山下の携帯で中居君に連絡とるんや」
「だけど・・それは・・・」

光一の妙案に剛は全く乗り気になれなかった。
山下に近づくこと――それは中居に近づくことと同様にとても危険な賭けであるのだから。

「可能性がないわけやない」

光一の覚悟を決めた顔が目の前にある。

「――わかった」

ついに剛もそれに同意した。

「山下やけど、校舎の付近にまだおると思う」

光一の言葉にうんと頷く。
向こうもこちらを探しているはずだ。
互いが範囲のせばまれた安全地帯にいるのだから、見つけ出すのにそう骨は折れないだろう。


一通り話を終え、時間的にも実質的にもこれが最後の戦いになるだろうと決意を固めると、すっと立ち上がった二人は、捨てきれないわずかな希望を握り締め歩き出した。




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